香りの記憶

ふとした香りで蘇る、あの日の記憶。
甘かったり、ほろ苦かったり、切なかったり。
そこには目に見えないけれど、たしかに感じたときめきが。

香りをきっかけに生まれる、エモい瞬間を
文筆家・写真家の蒼井ブルーさん書き下ろしの詩を通じて
描いた3篇のSTORY

春の香り

春の香り 新しい季節の訪れって、足音がだんだん大きくなるみたいに、少しずつなのだと思っていた。いい日だね、ときみは言った。やわらかな香りをまとっている。はじまれ、ここから。はじまれ、今日から。

コーヒーの香り

コーヒーの香り コーヒーは苦い、けれどあのころはあまかった。これを説明すると長くなる。まあ、手短に言うと、つまり恋だ。好きだった人が、好きだったもの。

あの人の香り

あの人の香り 懐かしい香りとすれ違った。あの人の香りとすれ違った。忘れたものだと思っていた。でも違った、閉じこめていただけ。

詩:蒼井 ブルー
大阪府生まれ 文筆家・写真家
2015年に初著書となるエッセイ『僕の隣で勝手に幸せになってください』(KADOKAWA)を刊行、ベストセラーに。ほかに、『NAKUNA』『君を読む』『ピースフル権化』『もう会えないとわかってから』などがある。